バンドマンイトーさんの見た世界
伊藤さんの昔話

プライドは時には人の役に立つお話

プライドは時には人の役に立つお話

 

どうも。伊藤さんです。

 

人間誰しもが持っているであろう「プライド」。

日本語で言うと、「誇り」とか「自尊心」という意味らしい。

 

世間一般に使われているプライドの意味を考えると、

「誇り」というにはいささか大げさすぎる気がする。

 

現在使用されているプライドという意味は、

自尊心という意味でつかわれていることが多いと思う。

 

「僕は糞尿、特に便に関しては人並外れた知識を有し、

他者よりも優れた情報を持っているため、

糞便については誰にも負けないプライドを持っている」

 

こういった他者と比べたりすることで自分の品位を保とうとする心。

それがプライドなのだ。

 

糞便によって自分の品位を保とうとしているあたりかなりの矛盾が生じているが、

この際これについては言及しないことにする。

 

さて、このプライド。

 

人間にとって時にはとても大切であり、

時にはとても不要なものに成り代わる。

 

他者には負けない自尊心を保つために、

ほかの誰よりも優れている状態を保とうとする。

これもプライドによって生じる現象であるが、

自分を便なる高みに押し上げるためにプライドは一役買っているのだ。

 

「え!?あんな形の便もこの世に存在するのか……

まだまだ知識が足りない!苦手分野の草食動物の便を便強しなければ!」

 

このように、プライドが自分自身を便に高めてくれるのだ。

負けず嫌いの精神の根幹とでもいえるだろう。

 

対して、プライドがマイナスに働くことも往々にして起こりうる。

時としてプライドは人の柔軟性を損なう邪魔な存在にも変わってしまうのだ。

 

「コーンがしっかりと消化されて出てくる?そんなバカな便事情があるか!

僕の尻からは口にいれたままのコーンが大量に出てくるわ!」

 

自分の自尊心を保ちたがるあまり、

他者の意見を受け入れることができない、頑固者に成り下がってしまうのだ。

 

そんな毒にも薬にもなる便利な言葉「プライド」だが、

結局のところ、”その人自身”にしか作用しない言葉であることには変わりがない。

 

つまり、その人にとってのプライドが他者に影響を及ぼすことはほとんどないと思っていたのだが、

ここ最近思い出した僕の過去のエピソードで、

僕のプライドが他者のプライドにも影響する出来事があったことを思い出した。

 

あれは、小学生になるかならないかぐらいのころだったと記憶している。

 

その時、僕は自転車の練習をしていた。

父親と公園にいっては、

体に傷を作りながら自転車に乗れるように頑張っていたのだ。

体を傷つけながらもひたすらに二輪に打ち込むその姿は、

今は忘れてしまったひた向きさがにじみ出ていたことだろう。

 

そしてそんな練習に付き合ってくれる父親も親の鑑だったといえる。

 

「しっかりペダルをこいでスピードを出せば転ばないで乗ることができる」

 

そういって父は僕に的確なアドバイスを施してくれる。

 

アドバイスを聞き入れて乗るも、

やはり怖さのせいかスピードはあまり出せない。

そして転ぶ。

また体に後に勲章になる傷を作る。

 

そして父は言う。

「しっかりとペダルをこいでスピードを出せば転ばない」

彼はまた的確なアドバイスをくれた。

 

こういう時、たいていの親は後ろの荷台部分を押して、

助走をつけさせて子供にスピードの安定感を教えるものだと、

今になって思う。

 

しかし彼は的確な素晴らしいアドバイスをくれるだけだった。

 

再度チャレンジする僕に向かって、

 

「ペダルだ!ペダルをこいでスピードだ!」

 

そう助言をくれる。

 

当然転ぶ僕。

 

すでに僕のひじもひざもボロボロだ。

 

しかし僕はあきらめなかった。

早く自転車に乗りたいその一心で、ひたすらにチャレンジをするのだ。

 

そして、父親が的確にアドバイスをしてくれるのだから、

その期待にもこたえなくてはいけない。

 

今にして思えば、ベンチに座って煙草を吸いながら、

「スピードで安定する!」

とか口だけしか動かしていない父親は、

僕が自転車に乗れるという期待なんてみじんも込めていなかっただろう。

 

しかしながら、子供の学習能力はすごいもので、

身の入っていないアドバイスが功を奏したのかどうかはわからないが、

次第に乗れるようになった。

 

「すごい!ちょっと乗れるようになったよ!」

 

僕は嬉しそうに報告した。

 

「そうだろ?スピードが足りないんだよ、スピードが。もっと早くこげ」

煙草をくわえながらにやりと笑う父はしてやったり顔であった。

 

僕も当時はあほであったから、ひたすらにスピードを追い求めた。

さながらF1レーサーである。

 

そして努力した結果、ついに自転車に乗れるようになったのだ。

幼心の僕からすると、この偉業を成し遂げたのはやはり父親の的確なアドバイスがあったからだと思った。

父親のアドバイスに従ったから安定して乗れるようになったのだ。

 

実際は壊れたラジオのごとく「スピード」を連呼していたただけなのだが、

当時の僕には神様に思えた。

 

 

そんな自転車に乗れるようになった次の日。

僕は父親とサイクリングにいった。

 

乗れるようになった自転車をこいで、僕はどこか自慢げに風を切っていた。

 

そして公園についた父親がこういった。

 

「よし、競争するぞ」

 

あらかじめいっとくが僕の父親は馬鹿である。

 

昨日、体に傷を作りながらようやく自転車に乗れるようになった、

ビギナー中のビギナーである僕に向かって

スピード勝負である自転車レースをやるという狂った提案をしてきたのだ。

 

しかし幼い僕は競争ができるまでに成長したと思い、

喜んでその申し出を受けた。

実際、公園までの道中は危なげなく自転車に乗っていた。

安定感も昨日よりはばっちり増していた。

 

「勝ったらアイスを買ってやる」

 

俄然やる気が出てきた。

父親はあまりこういった娯楽的なものを僕に買い与えなかった。

娯楽の品々を買い与えるのはもっぱら母親の役目であり、

父親は僕に厳しかった記憶がある。

 

そんな父が勝負に勝ったらアイスを買ってくれるのだ。

これはもう俄然やる気になる。

 

「ハーゲンダッツね!」

当時僕が知る限りの最高級アイスを要求したが、

 

「わかった、がりがり君だな」

 

あっさりと別の格安アイスにクラスチェンジした。

 

若干の煮え切らなさが残るものの、

アイスが食べられるのならばとスタートラインについた。

 

「いちについて……」

 

父がカウントをしだした。

僕はペダルをこぐ脚と、ハンドルを握る手に力を込めた。

 

「よーい……ドンッ!」

 

合図とともに僕たちはペダルをこいだ。

 

僕は狂ったようにペダルをこいだ。

 

スピードが安定感を増す……

 

狂ったように父が僕に投げかけた言葉が脳裏をかすめる。

 

ほんとに安定している!

 

スピードに乗った僕は

今までにない安定感で自転車を操っていた。

 

しかしながらやはり偉大な父親。

ぴったりと後ろに張り付いてはいるものの、

一向に抜けない。

 

絶対にアイスをものにしてやる……!

 

そう自分に言い聞かせ、

より一層ペダルの回転数をあげる。

 

その瞬間、僕の前輪が父親の後輪に接触した。

 

と、同時にフルスピードで走っていた僕は盛大に転んだ。

 

そしてそのスピードのまま顔面からアスファルトにダイブ。

片側の顔面が下ろされた大根のようになった。

 

当然、大泣きする僕。

慌てる父親。

レースは中断。

露と消えたアイス。

 

結局、父は泣き続ける僕を抱えて家に帰るしかなかった。

ここまでが僕の修羅場であり、ここからが父親の修羅場だった。

 

家につくなり、母親が惨状を見てしまったのだ。

 

「どうしたの!?何があったの!?」

 

父に事情を聞く母。

 

「いやー……レースをしてたら転んだみたい」

 

「ばっかじゃないの!?」

 

ごもっともである。

 

「昨日ようやく自転車に乗れるようになった子にレースなんてさせる!?」

 

ごもっともである。

 

「いやー……いけると思って。な?」

 

僕に同意を求める父親、クズである。

 

しかし、僕はこの「ほんとはいけただろ?」っという同意にうなづいた。

 

これは決して父親をかばって同意したわけではなかった。

 

僕は昨日自転車に確かに乗れるようになった。

そして今日、父親のアドバイス通りスピードにも乗れた。

なんなら僕は風になっていた。

つまり、自転車の運転に関してはもうすでにマスターした自負が自分の中にあったのだ。

 

しかし母親は言う。

 

「乗れるようになったばかりの子になんでそんなことをさせたのか」

っと執拗に父をせめたのだ。

違うんだお母さん。

 

あれは不意の事故だったんだ。

決して僕の自転車歴が浅いことに起因する、

つまり自転車の運転がへたくそだから起きた事故じゃないんだ。

 

当時の僕はそれを言葉にできるほど知識ももってなく、

さらに顔面血だらけだったので話す体力も残されていなかった。

だから伝えることはできなかったが、

父親の「お前はしっかりと運転できてたよな?」に対してはうなづけた。

 

「ほらな?運転はできるんだよ。こいつもうなづいてるよな」

父親は嬉しそうだった。

それはおそらく、自転車に関しては乗れるようになった自慢の息子がうれしいのもあっただろうが、

それ以上に、おそらくこの状況を察して父親をかばってくれてるんだと思われたからであろう。

 

しかし調子に乗る父親に対し母親は、

「バカじゃないの!?いいから早く病院に行くよ!!」

至極まっとうなことを発していた。

 

結果的に母親には父親とともに大目玉をくらったわけだが、

自転車に乗れるという自分のプライドを守る行動が、

結果的に父親をかばい、父親の自尊心をも守る形になっていたのだ。

 

 

父親に病院に連れていかれた帰り道、

僕は父親にハーゲンダッツを買ってもらった。

あの日食べたハーゲンダッツは少し血の混じった味がしたけれど、

とてもおいしかった気がする。

 

しかしその代償に、

しばらくの間僕は頭部だけミイラ男みたいに包帯まみれになってしまったのだった。

 

自分の力量を知って、プライドをかざさないといけないことを知った伊藤さんなのであった。00

 

 

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ABOUT ME
イトーさん
とあるバンドのキーボード担当。 でも音楽は全くしていない。そんなバンドマン。

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