バンドマン伊藤さんの見た世界
伊藤さんの昔話

コールドスリープマキタ君の話(冷凍睡眠物語)

コールドスリープマキタ君の話(冷凍睡眠物語)

 

どうも。伊藤さんです。

 

今回は今までのドラえもん話やパラドックス話といった、

わけのわからんことは横におきまして、

伊藤さんの昔話でもしたいと思います。

 

今までと少し趣向が違いますが、

なんとなく昔話をしたくなりましたので、

ドラえもんが全く終わっていないことをそっちのけで、

いつも通り適当に書いていきたいと思います。

 

コールドスリープマキタ君のお話

 

コールドスリープ。

それは人体を冷凍保存して体の生命活動を一時的に停止させることで、

命や若さを保ちながら何年後、何十年後の時を眠ったまま過ごすことのできる技術です。

 

これにより人間は眠ったまま未来の世界に行くことができるといった夢のような技術ですが、

あいにくとこの技術は空想小説やSF物語などでしか登場しないものとなっており、

人類がのどから手を出してほしい技術のうちの一つであると僕は思います。

 

かくいう僕もこんな技術がもし発明されれば、

実際に使ってみて、

働かなくてもいい世の中になるまで眠り続けていたいです。

 

目を覚ましたらロボット技術が進化した世界であり、

何もしなくともロボットが僕の身の回りを世話し、

超堕落的な生活を送ることができるといった妄想を

たびたびしてしまいます。

 

そんな世界にいったら、生命としては生きているといってもいいかもしれませんが、

人間としては死んでるも同然なので、

コールドスリープをしてまで行きたい世界なのか?

といった疑問が普通の人なら頭をめぐるかもしれませんが、

あいにくと僕は普通の人でもまじめな人でもないため、

さっさと超堕落的な生活を送りたいと切に願っております。

 

しかしながら、今の人類の技術力では到底不可能なコールドスリープ。

残念ながら僕の妄想も妄想で終わらすしかないのか……

っとあきらめるしかないと思いますが、

実は僕が子供のころにこのコールドスリープ技術をやってのけた人物を僕は知っています。

 

 

それがマキタ君です。

 

 

彼は小学生時代の僕の友達でしたが、

残念ながら途中で転校してしまい今は連絡すら取ることはできません。

 

マキタ君とはよく一緒に遊んでいました。

もう一人の友人、サカイ君と3人で

学校が終わったら家に一回かえって、

すぐさま集合し男子にありがちなくだらない遊びを

日が沈むまでしていた記憶が今でも瞼を閉じれば鮮明に浮かびます。

 

 

ある時僕の住む町に大雪が降りました。

普段雪なんて降っても軽く積もるぐらいで終わる地域であったので、

交通状況がマヒするほどの雪はとても珍しかった記憶があります。

 

当然のことながら、学校は休みとなり、

普段は見ることのない一面の銀世界という、

非日常が雪とともに降り積もった世界を見て、

僕はテンションがとてつもなくあがったことをよく覚えています。

 

朝目が覚めて、カーテンを開けてから窓越しに見た銀世界。

その世界を見た瞬間、いてもたってもいられなくなり、

すぐさま僕はマキタ君に電話をしました。

当時は携帯電話なんて代物は普及していなかったため、

マキタ君の家の固定電話にかけるとマキタ君のおばさんがでました。

 

「おばちゃん!マキタ君いる!?」

「はーい。今家の目の前で雪だるま作って遊んでるからちょっと呼んでくるね」

 

何回もマキタ君と遊んでいるのでおばちゃんは手慣れた様子で

マキタ君に電話を取り次いでくれました。

 

「おはよー。すっげぇ雪だな!」

 

開口一番マキタ君は言いました。

 

「なっ!すっげぇよ!世界のおわりだ!」

 

何が終わりなのか、

おそらく僕の頭が終わっていると思いますが、

マキタ君も同レベルなので会話は続きます。

 

「世界が終わる前にすっげぇ雪だるま作ろうぜ!」

「わかった!いつもの公園いこう!」

 

なぜ学校が休みなのか、

それはおそらく雪に慣れていない小学生達が通学するのは危険と

学校側が判断したから休校になっているはずなのですが、

そんな危険な世界に飛び込むあたり

やっぱり小学生はアホだなと今は思いますが、

当時はその危険な世界に身をゆだねなければいけないという、

使命感しかありませんでした。

 

そして公園で合流する僕とマキタ君。

 

「サカイ君も呼んだんだけど、おばちゃんにダメって言われたみたい」

「あいつの家、厳しいからなーせっかくのハイパー雪だるまタイムなのに…」

 

僕たちはサカイ君がこれないことに若干の寂しさを覚えました。

しかしながらこんな大雪の中、

外に遊びに行くことを許した僕とマキタ君の親は

だいぶ問題があると思うのですが、

小学生の時分には全く気にもとめませんでした。

 

「早速ウルトラ雪だるまを作ろうぜ」

 

マキタ君はそういって、

家から持ってきたであろうシャベルを手に取り言いました。

 

「東京ドーム1個分の大きさの雪だるまを作ろう!」

 

当時、東京ドームで大きさを例えるのが

僕たちの間でひそかなブームでした。

冷静に考えると

まず敷地が東京ドームほど広くない場所で作り始めようとしていること、

さらに東京ドームと同じ大きさの雪だるまを作るという行為は重機でもないと不可能であること、

そもそもいくら大雪だからといってそれほどでかい雪だるまを作るほど雪はつもっていないこと、

っという3倍満で不可能であることはすぐさまわかるのですが

そこは小学生の発想なので東京ドームを目指しもくもくと作業に没頭しました。

 

 

「あっ、サカイ」

 

 

作業に集中しているとマキタ君がつぶやきました。

 

視線を公園の入り口に向けると、

サカイ君が入り口からこちらに向かっている姿が見えました。

 

僕らに近づいてくるサカイ君をよく見ると、

目から涙を流していました。

 

「どうしたの?」

 

僕はサカイ君に尋ねました。

 

「お母さんが外に出るなっていうけど……隠れて出てきた」

 

きっとサカイ君は泣きながらお母さんに懇願したのでしょう。

どうしても外に出たかったけれでも、

何度お願いしても許可が下りなかったのでしょう。

 

親の心からすると至極当然のことです。

しかしながらサカイ君はなぜ自分だけ遊びにいけないのか、

こんなに雪が降っていて魅力的な世界に飛び込めないのか、

そんな感情を持ち合わせていたのでしょう。

涙とともに悔しさや親に対する憎悪が入り混じった表情をしていました。

 

「もうやだよ……」

 

彼はつぶやきました。

 

サカイ君の気持ちは痛いほど理解できました。

僕も親に怒られたりしたらなぜ起こられなければいけないのか、

不思議でしょうがなかった記憶があります。

 

そんな親と子供というこの世でもっとも理不尽な間柄が成立する

この不条理な世界に悔しさを覚えるサカイ君の気持ちを理解したのか、

マキタ君はとある提案をします。

 

 

「これだけ雪が降っていて寒いから、コールドスリープすれば?」

 

「コールドスリープ?」

 

僕とサカイ君は聞き返しました。

 

 

「この前テレビでやってたデモリッションマンって映画でコールドスリープってのをやってた。冷凍睡眠すると何十年も先の未来まで寝ることができるらしいから、親が死んだころに目覚めればいいんじゃない?」

 

 

マキタ君はとんでもない提案をしてきましたが、

サカイ君は乗り気でした。

 

「親がいない世界にいけるの?」

 

「この大雪ならできるよ!」

 

どこからそんな自信がくるのかはわかりませんが、

アホのマキタ君は力強く答えました。

 

僕は冷静に無理であろうと思いましたが、

自信満々に可能であることを宣言するマキタ君をみて、

可能なのかもしれないと思うようになりました。

さらに友達であるサカイ君がこんなに悩んでいるのだから、

なんとかして助けてあげたいと思ったので、

それしか方法はないと思いいたりコールドスリープに賛同しました。

 

僕もアホでした。

 

 

「……やる。コールドスリープやるよ!」

 

 

サカイ君もアホなので乗ってきました。

 

 

「よっしゃ!じゃあサカイ!そこに横になって!」

 

 

さっそくコールドスリープの準備に取り掛かります。

とはいっても何をするのか僕はまったくわかりません。

 

 

「どうやってコールドスリープするの?」

 

 

僕はマキタ君に尋ねました。

 

「サカイに雪をかけまくれば寒くなってコールドスリープできる!」

 

マキタ君は頭がいいなと僕は思いました。

 

このくそ寒い中雪をかけて長時間放置すれば、

永久にスリープできるとは思いますが、

それは目覚めのないスリープであることを3人は気づきません。

 

「わかった、じゃあお願いします!」

「あ、ちょっとまって」

 

サカイ君が寝そべろうとしたときマキタ君がとめました。

 

「これ、寒いだろうから着ろよ」

 

そういってマキタ君は自分が巻いていたドラえもんのマフラーを

彼に差し出しました。

 

寒くしてコールドスリープ状態にするはずなのに、

マキタ君は体を温めるためのマフラーを差し出すという、

目的に対しての手段に矛盾が生じています。

 

しかしながら僕はこの時、

親から逃げるためにコールドスリープを提案するだけでなく、

自分の着ているものをサカイ君の体を心配して差し出す行為に対し、

なんて優しいんだマキタ君は、僕もこんな友達想いの人間になりたいと

心の底から思ったと同時に、

こんな友達をもったサカイ君は幸せものだなと思いました。

まぁこの後サカイ君は地獄を味わうわけですが。

 

 

「よし、さっそく作業にとりかかろう」

「よろしくな!」

 

 

マフラーを巻いたサカイ君は雪の上に横たわりました。

 

そして僕らはせっせと雪をサカイ君にかけていきます。

 

「コールドスリープは難しいはずだから、

雪の量が足りないと途中で起きてしまうかもしれない。

だからめいっぱいかけていくぞ!」

 

マキタ君はいいました。

その言葉に従い僕もどんどんサカイ君に雪をかけていきます。

 

 

夏場の海沿いの砂浜で砂に埋もれた人がたまにいますが、

あれと同じような形状で雪をかけ続けました。

 

 

そしてサカイ君の全身が雪に埋まります。

 

「サカイ、息ができなくなると死んじゃうから顔には雪をかけないよ」

「うううううううんんんん」

 

サカイ君は寒さのあまりろれつがうまく回ってませんでした。

 

「寒いか?」

マキタ君はサカイ君に尋ねました。

 

「ささささささむむむさむむむさささむむむ」

 

サカイ君の声はよく聞き取れませんが、

きっと寒いと言っているのでしょう。

 

「よし!成功だ!このままの状態で時間がたてば眠れるはず!」

 

マキタ君はガッツポーズをしました。

その姿は夏休みの宿題を最終日にやり切った男の顔でした。

僕も額に汗を浮かべながら喜びました。

 

「じゃあ俺らそろそろ昼ご飯だから家に帰るね」

 

公園の時計を見ると、もうすでに12時前でした。

「わわわわかかかかかわわかわか」

 

きっとサカイ君はわかったと言っているはず。

「バイバーイ」

 

そういってマキタ君と僕はサカイ君をその場に残し家に帰りました。

 

それぞれの家に帰りご飯を食べたあと僕はマキタ君に電話しました。

 

 

「サカイ君がコールドスリープできたか見に行ってみない?」

「ごめん、兄ちゃんと一緒に灯油を買いに行くことになったから今日はもう遊べない。

それにコールドスリープはそっとしておかないと成功しないかもしれないから、

そのままにしておいたほうがいいよ」

 

マキタ君はそういって電話を切りました。

僕はその通りだと思ったので、家でマリオカートを楽しみました。

 

 

そして次の日。

まだ溶け切っていない雪の中を歩いて学校に行くとサカイ君の姿はありませんでした。

 

「サカイ、コールドスリープ成功したっぽいな」

 

マキタ君は嬉しそうに僕に話かけてきました。

 

「そうだね!どんな感じになっているか見に行かない?」

僕はマキタ君に提案しましたが、

「いや、ショックを与えると目覚める可能性があるから、

サカイのためにそれはよしておこう」

マキタ君はそう返しました。

 

「そっか……そうじゃあもう2度とサカイ君とは会えないんだね」

僕は寂しくつぶやきました。

 

「そうだな……いいやつだったけどしょうがない。

でもあいつが目覚めるころに俺たちがまだ生きていればまた会えるさ」

 

逆にサカイ君がすでに死んでいる可能性も十二分にあるのですが、

コールドスリープが成功しているとしか思っていない僕らは、

未来にサカイ君との再会をかけました。

そう、僕らの友情はそれこそコールドスリープと同じように、

永久に続いていくのだとこの時思いました。

 

 

 

 

そして三日後。

なんとサカイ君は学校に現れました。

 

 

僕とマキタ君は驚きました。

 

「サカイ!どうした?もう親は死んだのか?死んだから目覚めたのか?」

 

マキタ君はデリカシーのない質問をしました。

 

「……熱出して家で寝てた」

 

サカイ君は悔しそうにつぶやきました。

 

「それじゃあコールドスリープは失敗だったのか!」

 

マキタ君も悔しそうに声を荒げました。

 

 

「何がコールドスリープだよ!

あの後いつの間にか家にいて、めちゃくちゃ親に怒られたんだぞ!

お前らのせいで!風邪もひいたし!!!」

 

サカイ君は激怒しました。

コールドスリープが失敗に終わってしまい、

僕らも残念な気持ちでいっぱいでした。

 

「ごめん……やっぱり雪の量が足りなかったのかもしれない。

次は東京ドーム3個分の雪でやってみよう」

 

マキタ君はあきらめていませんでしたが、

サカイ君はこの後、コールドスリープを一度も試みることなく、

マキタ君は転校してしまうのでした。

 

彼のことだからきっと転校先でも、

いや、

大人になった今でもコールドスリープの成功を夢見ていると思います。

 

成功したら是非ともサカイ君をコールドスリープしてほしいものですね。

そしてコールドスリープのように永遠の友情を持っていると思った僕らですが、

大人になった今一切の接触がないということは、

僕らの友情のコールドスリープも失敗に終わったようですね。

 

人間なんてあの雪の日のように冷たいもんだなとしみじみと思うのであった。

 

 

 

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ABOUT ME
伊藤さん
伊藤さん
新星ポップロックバンド「uNica」のキーボード担当。 日夜、メンバーのやる気を引き出すために奮闘中。

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