英語の出来ない親が子供に英語を教えるという愚行
英語が勉強になる前に……
そんなキャッチフレーズが独り歩きして、日本語すらろくすっぽ話せないうちから自分の子供に英語を教えたがる親はたくさんいる。
それこそ掃いて捨てるほど存在する。
もちろん、それは悪いことでもないと思う。確かに英語が勉強になってからは英語なんて勉強しない。間違いない。だから英語が勉強になる前に英語に慣れ親しんで、話せるようにしたいというのはわかる。
しかしながら、英語と同じぐらい日本語も教えなければならない。
日本に住んでいないなら日本語を覚える必要もないのだが、日本に住んでいて、これから先も日本に住み続ける以上はやはり日本語もしっかりと教えていかなければならない。
日本で暮らすにあたり、日本語を覚えていないとそもそも生活もできないから日本語は必須だ。
加えて、日本語を学ぶことで英語の良さというものも気づけるはずだ。逆に英語を学ぶことで日本語の美しさがわかることもあると思う。
つまり言語により自国と他国の文化の違いを垣間見ることができるので、日本語と英語を同時に学ぶということは、ただ言語を覚えるだけではなく、それ以上の何かを学べるはず。
しかしながら、日本語をおろそかにして、英語だけを教えたがる親の多いこと多いこと。
しかも、親が英語ができるからそのスキルを活かして子供に教える、っということでもなく、英語が全くできないようなチンパンジーマザーだとかファザーが、子供に外国のYOUTUBE動画を見せるだけで英語を教えている気になっていたりする。
自分自身は英語が話せないから、日常的に英語ができるわけでもなく、子供はどういう意味なのかもよくわからない状態で英語の音だけが入ってくるのだ。
もちろん、英語の発音に慣れさせる、という意味だったらこの訓練も悪くはないのかもしれないが、そもそも意味がわからないので英会話というスキルは身につかないと思う。
このように英語に触れさせることが大事と、勘違いをしている親が世の中には溢れていてうんざりしてしまう。
そして僕もご多分に漏れず、自分の子供に英語をついつい学んでほしくなってしまう。
僕は全く英語ができないので、”学んでほしい”っという思いはあっても”教えてあげよう”っという意識は全くない。これではただただ自分の価値観を押し付けているに過ぎない。
子供用の映画を見るときに吹き替えではなく、英語で垂れ流しにしたりだとか、英語の絵本を読んであげたりだとか、そんなことを子供にしているが、結局これらも一方通行なのだ。親が英語を知らなければ、こんなことをおこなっても無意味でしかない。
そこで僕は考えた。子供に英語を効率よく教えることを。
英語教室に通わせるという選択肢もあるかもしれないが、結局日常の中でいかに英語に触れる機会を多く与えてあげることができるか、といった点を考えることが一番の近道だと思う。
僕も小学生の頃、ちんこ=ペニスという単語を覚えてからは、ペニスを連呼していた記憶がある。そのかいあってか、ものすごくペニスの発音がうまくなった。”ペニス”ではないのだ、”ピェニェス”だ。発音がよくなったことに自信がついて、僕は英語に触れる楽しさを学んだと思う。それほどまでに日常の中での英語というのは大切なのだとこのエピソードからもくみ取れると思う。
つまり、日常で英語に触れる回数を多くする=必然的に親も英語を発さなくてはいけないのだ。
しかしながら前述の通り、僕の英語力は下の下。唯一自信のある単語であった”ピェニェス”も、何年も発していないので”ペニス”に戻ってしまっていた。
これでは英語に触れさせてあげることができない。そこで考えた結果、僕も英語を一緒に学べばいいのだ。
僕は普段、子供が寝る前に絵本を読んであげる。日本語の本もあれば英語の本もある。
この英語の絵本の発音を向上することを目指せば、子供にも正しい英語を伝えられるのではないか、絶対そうだ、そうに違いない。
そこで、練習のため僕はスマホを取り出した。
最近のスマホはかなり高性能であり多機能であるため、通訳機能なんてものが備え付けられている。
僕が持っているスマホにも当たり前のようについていた。
僕は、僕の英語力を確かめるためにこの通訳機能を使って、試しにスマホに絵本の読み聞かせをし、正しい日本語が返ってくるのかを試してみた。
ちなみに読んだ本はこれ。
英語の意味はさっぱりだけど、多分、「おばあちゃんの台所」的な絵本だろう。どこの国の本かもよくわからないが、出産祝いか何かでもらった絵本だったと記憶している。
この本も子供に何回か読み聞かせたが、ケーキだったかクッキーだったか、そんなお菓子を孫がおばあちゃんに教わりながら作る話だ。文字の意味はわからないけど、絵がそんなストーリーなので多分あってると思う。絵本でよかった。
さて、それではさっそく僕のスマホにこの本を読み聞かせてみるとする。
最初に読み聞かせたページはこれだ。
恐らく、外国でもこの絵本は子供向けのはずだ。そんなに難しい単語は出てこなかったはずと思ったのだが、意味がわからない単語が結構ある。
ついでに発音もよくわからない。
このページにいたっては、”laughter”の意味がよくわからないし、発音もまったくわからない。ラフター?ラウター?ロウター?
うん、わからない。
しかし所詮子供むけの本だ。こんなところで躓いていたら、子供に英語を教えることなんてできない。
なんとなくそれっぽく読み聞かせてみて、さてはて、ちゃんと通訳されるのか……
まさかの死のロブスター。
孫とおばあちゃんのほんわかお菓子作り絵本のはずなのに、まさかのデスロブスター出現。これにはダースベイダーもびっくり。
デスロブスターなんてRPGゲームの世界でも出てこなそうなモンスターを、まさかの幼児向けの絵本で出現させてしまった。出現率3%だよマジで。
でも、逆に考えてほしい。僕はデスロブスターの発音に至っては多分右に出るものはいないのだろう。じゃないと通訳されないはずだし。
気を取り直して、ほかのページも読み上げてみる。
これなら簡単そうだ。発音も日本人的な発音しかできないが、なんとなく読み上げることができる。
ここで躓いたら親の面目丸つぶれだ。一から英語を学びなおさないと子供に教えてあげるなんてことはできないだろう。
でも簡単そうだしきっと大丈夫だ。二度目の死のロブスターは登場しないはず。出現率3%だし。
僕はスマホに読み聞かせた。
結果。
僕はそっと絵本を閉じた。